今は亡き愛犬に教えてもらった「やさしさ」

2023年1月9日 投稿者: STAFF. オフ

もう10年ほど前の話です。私の家庭は両親が共働きで学校から家に帰る時間帯は家には誰もいません。ですが、唯一待っててくれるのは5年ほど前に亡くなった愛犬でした。私が家の鍵を無くすのを恐れて、親が仕事が帰ってきたら鍵を開けてもらって家に入るという生活をしていて、愛犬は外にある小屋で過ごしていました。私は、親が仕事から帰ってくるまでの1時間ほどをその場所で一緒に過ごしていました。

暑い日も、寒い日も、雨が降っていた日も一緒でした。待っている間は学校であった出来事をたくさん愛犬に話していました。もちろん何か返事が返ってくるわけではありませんが、私にとっては家族であり友達でもあるような存在だったのです。私が帰ってくるまで寝ていたとしても、足音で起きて迎えてくれたりしていて、とにかく大好きでした。親の帰宅が少し遅くなるときは一緒に長い距離を散歩したり、庭で犬用のおもちゃで一緒に遊んだりしていました。その時は既に老犬だったので無理の無い程度で楽しんでいました。

ドックランのような広い場所は設けられなかったけれど、愛犬も喜んでくれていたので私も嬉しかったのです。両親から「その(犬用の)お菓子は高いからあまりあげないでね」と言われていたものも、私のお話に付き合ってくれたお礼として毎日あげてしまったりもしていました。本当に穏やかで面倒見のいい素敵な愛犬で、それに影響されて私の性格までもが穏やかになり、「人の性格って本当に変わるんだ」と思いました。時は経ち、私も高校生となり、帰宅時間が両親よりも遅くなったことから愛犬との時間は長くはとれなくなってしまいました。

もっと一緒に遊びたい気持ちはあったものの、部活や受験に追われてしまっていました。とうとう愛犬が老衰死してしまい、無理やりにでも一緒に過ごす時間を作らなかったことに後悔しました。ですが、10年経った今でも当時のことははっきりと覚えていますし、愛犬に教えてもらった「やさしさ」を大切にできています。もう会えないけれど、これからも心の中では通じあっているのだなと思い、嬉しく思いました。