供養を思い出として受け止めるまで

10年ほど前に愛犬を喪いました。
愛犬を喪ったとき、どう供養するかは悩むところです。
大きく分けてその愛犬のためだけに葬儀を行う個別供養と、他のわんちゃんたちと一緒に執り行う合同供養とがあります。
両者は費用面でかなりの差が出ます。
当然、個別供養のほうが断然高くなります。

しかし長年連れ添った愛犬との別れを、金額が高いからという理由で合同供養にするつもりはありませんでした。
少しくらい高くてもかまわないから、その最後までしっかりと送り出したいという気持ちからです。
お世話になっていた動物病院経由で葬儀会社を選びました。
当日、お迎えに来られたスタッフさんはお棺に安置されている我が子に、丁寧に手を合わせてくださいました。
よく見ると喪服に数珠を持っています。
「ああ、人間も動物も同じなんだ」と思いました。

犬だから猫だから、このくらいで……という感じがまったくありませんでした。
人間と同じように供養してくださるのだと感じました。
斎場ではお花やおもちゃを周りに並べ、最後のお別れをします。
おもちゃは材質によっては炉に入れられないため、許可を得られたもののみを我が子に持たせます。
炉に入れられ、お骨となって戻ってきた我が子。
ここでもまた驚いたことに、スタッフさんは生前、我が子が患っていた病を言い当てました。
長年、この仕事をしているとお骨の状態を見るだけでどこが悪かったか、などが分かるそうです。
そんなところまで見ていただけるんだな、と感心しました。
納骨はしませんでした。
お骨はいまも自宅にあります。

とある和尚さんの説では、お骨は天上のわんこにとってアンテナのような役目をすると言います。
つまりお盆の時期は、そのお骨を目印に帰ってくるのだそうです。
自宅には豪奢な仏壇もなければ、仏具もそろっていません。
そのかわり元気だったころの写真とたくさんのお菓子、おもちゃをいつも備えています。
わんこは鼻が利くので、もしかしたらお線香の煙はけむいかもしれないと思い、使っていません。
供養の仕方はそれぞれだと思います。
大事なのは形式ばかりに囚われるのではなく、どう思い、どう向き合い、愛犬のために何をしてあげるのが一番いいかを考えることだと思います。