【おじや嫌いの父が作る汁かけ飯が好きな犬

私の実家は、庭に出ての門前に立つと空気が澄んだ日の早朝には、耳を澄ますと波音が聞こえる場所にあります。
車の往来も多く、遊びでボールを追いかけるのに夢中にならないよう母や祖母にいつも言われていました。
このような場所に家があるので、年に2、3回ほど道路脇に生れたばかりの犬や猫が段ボールに入れられ捨てられていました。

母と祖母は、そんな動物たちを見つけると保険所に連絡するとどうせ殺処分になるから可哀そうと言います。
それに捨て猫は縁起がよいものと言われているので、拾ったら家で飼うか、欲しい人にあげています。

猫は増えないように手術をして数匹飼っているのが普通でした。
また母は子犬の場合は、人慣れするように育てると、猫よりも従順でよい子に育つと言い世話をしています。
拾われた恩を忘れないみたいで、芸はしませんが優しい性格になる子もいて、そういう子は、近所の人が譲って欲しいと言われるので母はあげてしまいます。

拾った犬の中には、家にある農機具の機械音に全く興味ない子もいて、耳でも悪いのかなと思っていたのですが、雷が近づくと遠吠えをしました。
その犬は「チャッピー」と名付け臆病な父と相性ピッタリです。
父は犬が嫌いで「犬め」と犬に名前を付けても呼んだことはなかったのに、チャッピーだけは名前を呼び、賢いなお前と頭を撫でる姿を初めて見ました。
それから父はチャッピーを畑に連れて行くようになりました。

実家の食事時間は、8時頃で、これだとチャッピーが、腹が減って可哀そうと父は午前4時頃に、冷ご飯にぬるめに温めたネギなし味噌汁をかけたご飯を食べさせ、畑に一緒に行きます。
これまで父はご飯を用意したことがないのですが、チャッピーは特別扱いです。母は家族の分も用意してくれたらいいのにと時々愚痴を言っていますが、父が犬を好きになってくれたのはよかったと言っています。

チャッピーは、ご飯の軟らかさが好きなのか、それとも味噌味が好みなのか、汁物の喉越しのよさがいいのかはわかりませんが食べっぷりはいいです。
父が一番苦手な食べ物は余った味噌汁にご飯を入れた柔らかドロッとしたおじやが大嫌いで食べないのに、チャッピーには作ってあげていたから、チャッピーは可愛くてしょうがなかったのだと思います。

うちの農家は米も作っているので、米好き犬がいるのも嬉しそうです。
チャッピーは亡くなる直前まで汁かけ飯を食べていて、父も10年間、欠かさず、朝、作ってあげていました。